8月の1本と1冊

ベイビー・ドライバー』(なんばパークスシネマ)

〈次点〉『パターソン』(シネリーブル梅田)

『本当の戦争の話をしよう』ティム・オブライエン

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今月は前半の2週間、全く映画を観に行かなかった・・・という「非常事態」。

お盆休みを控えていて何かと気忙しかったのに加え、真夏の猛暑で出掛ける気が失せていた。興行も夏休み映画にシフトしていて、興味を掻き立てられるのに当たらなかった、という様々な事情があるのですが。。。

って何をたいそうに。そんなのはテメエの勝手やんか(笑)

自称映画マニア目線で言えば、そりゃあ『パターソン』になるでしょう。

ジム・ジャームッシュの待望の新作。

タイトルは米国東部の地方都市。ここが舞台。その適度に寂れた、ゆったりとした風情がジャームッシュらしい。主人公の名もパターソン。彼は詩作が趣味のバスの運転手。演じるはアダム・ドライバー。これもまた二重に洒落が効いているけど、監督の話によれば単なる偶然とか(笑)

主人公と、同棲する恋人。愛犬との暮らし。運転手として彼は様々な人間を観、話に耳を傾けて(というより盗み聞きに近いが)、犬の散歩がてらに立ち寄るBARでのひと時・・・

その毎日が繰り返されてるようで、実は色々と変わった出来事が彼の身に起こる。それもこれも彼の詩想の糧になるのか。日常の中のちょっとしたファンタジーがひらりとそよぐ感覚の心地良さ。

ジャームッシュらしいインテリジェンス、熟成したお酒をちびりちびりと飲むような深い味わい(例えるなら日本酒でもワインでもウイスキーでも何でもいい)が満点だ。その「旨味」を支えるのは撮影と編集の良さ。「タメ」と「キレ」が本当にいいんですよね。そして、ちょっとしたユーモアや哀感のしのばせようも絶妙。

【予告編】https://youtu.be/kpruzhc1zMY

そんな『パターソン』をうっちゃって、あえてベストに選んだ『ベイビー・ドライバー』 。はい、今月は攻めの選考です(笑) 何しろこの映画、全くノーチェックで、友達さんにお薦めされるがままに観に行ったら、これが面白いのなんの!

いわゆる「逃がし屋ドライバー」系のカーアクション映画だ。これは6年前の『ドライブ』や、78年の『ザ・ドライバー』など類型は多いが、主人公「ベイビー」のキャラクターがとにかくユニーク斬新なのだ。

自閉症かと思うくらいにシャイで無口な性格。しかし超人的なテクニックの持ち主にしてマニアックな音楽リスナー。いや、そもそも音楽無しでは運転もできない(ノレない)という変わり者。更に「宅録オタク」!(笑)

ルックスも紅顔の美青年。そんな彼がどうしてボス(ケヴィン・スペイシー)の言われるままにギャング達の足になっているのか?ベイビーが聾唖の老人と同居しているのはなぜか? 物語はそこまで説明しない謎のはらみようが 緊張感となって、逆に観る者の気持ちをどこまでも引っ張り、幾つもの山場が繰り返される、息をもつけぬアクションの連続がたまらない。

ギャング役の1人がジェイミー・フォックスというのも驚きだ。彼は「いい人」役のイメージが強かっただけに、そのヤバさもひとしお。

そして何と言っても、この映画のもうひとつの魅力は、ベイビーの趣味がそのまま全開になっている劇中BGM。パンクからプログレ、ラテンまで、彼のハンドルさばきを見るかのように縦横無尽ジャンルに切れ目なく流れるのがたまらない(サントラはCD2枚組!) しかもそれがアクションのリズム感と見事にシンクロしている(フォーカスの「Hocus Pocus」と、「Tequila」が最高!」)

ラストシーンに流れるのはタイトルと同じあの有名デュオ。なんと心憎い。

スタイリッシュでスリリングでスピーディー。まさにエンタメ映画の「3S」 。みなさんも、騙されたつもりでぜひ観ていただきたい。

【予告編】https://youtu.be/nwR1dArkDMQ

『ハートストーン』(テアトル梅田)

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『ローサは密告された』(テアトル梅田)

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ブランカとギター弾き』(シネリーブル梅田)

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エル ELLE』(大阪ステーションシネマ)

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『ロスト・イン・パリ』(シネヌーヴォ)

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ベスト本は先月に続いて戦争小説だ(苦笑) まあ、夏だからいいじゃないですか(笑)

「夏の宿題」も、おかげさまで1冊を除き全てクリア(残る1冊もあと半分だったのに)以下良かった順に。

『ブラインド・マッサージ』をベストにしようかとも思ったけども、『本当の〜』のティム・オブライエンは、昔に読んだことのある縁で、しかもこんな作家だったのか、と再発見できたことも含めて。

『ブラインド・マッサージ』ビー・フュイユイ

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直木三十五伝』植村鞆音

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『ジャズカントリー』ナット・ヘントフ

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『絶望名人 カフカの人生論』

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『酒場天国イギリス』小坂剛

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ベルリンの壁エドガー・ヴォルフォルム http://SNS.jp/view_item.pl?reviewer_id=26940262&id=2365338

『地下鉄誕生』 中村建治

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『ラジオ 問わず語り』 佐藤康人

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『ベルリン物語』 川口マーン恵美

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『鉄道と刑法のはなし』 和田俊憲

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