ある男性アナ解任劇の裏側

あまり詳しい個人情報は書けないのですが、高校時代、一度だけ接点のあった男性アナウンサーがいます。接点と言っても、僕が所属していたクラブを取材してくださっただけですけど。

仮に「Aさん」としておきましょう。

190cmはあろうかという長身で、細身のイケメンです。しかも声が渋く、ユーモアのセンスもある。

その頃から、放送業界を目指してたわけではないのですが、心の底では、そのアナウンサーに憧れていました。男惚れってやつですね。

その思いが通じたのかわかりませんが、それから10年ほど後になって、僕は偶然にも、そのAさんが在籍していた放送局に派遣されました。

ところが、ですね。なんとも残念なことに、そのAさん、お辞めになってました。僕とそんなには年齢離れていない筈だから、定年にしては早過ぎるわけです。

セミリタイアかとも思いましたが、そうでもなさそうなんですね。

納得いかないことがあると、とことんまで追求する癖のある座敷童子なものですから(だから、上層部から嫌われるんですよね)、それとなく、Aさんが辞めてしまった理由を聞いて回ったわけです。

ところが、それに関しては誰も話したがらない。まるで、北のとある国みたいに、触れてはいけないタブーがあるかの如くにです。

仕方ないので、たまたま知り合いのフリーディレクターに、Aさんが辞めてしまった経緯を尋ねたわけです。このフリーのディレクター氏、僕よりも内部事情に精通した人なんですね。

彼から、そのAさんが辞めた理由を聞いて、正直我が耳を疑いました。

Aさんは、依願退職では勿論ありませんでした。会社に損害を与えたわけでもありません。

その一番の理由は、なんとなんとなんと、「上層部の嫉妬」だったそうなんです。

では、なぜAさんが嫉妬されてしまったのか・・・・・。

なんとも、卑俗な表現で恐縮ですが、要するに、彼はイケメンなわけです。喋りも

キーステーションのアナウンサーに劣らないほどのレベルにある。ユーモアのセンス

もあって、女性からはもてる。しかも、奥様連中に特にもてたらしいのです。さらにこれには

オマケがついていて、そういうAさんのようなキャラを持ったアナウンサーは、その局では

初めてだったらしいのです。それぐらい特異な存在だったわけです。

このAさんが煙たくなった上層部は、まだ30代の彼を、取締役に無理矢理昇進させようと

画策したそうです。役員にすれば、現場に出なくなりますから、女性と接触する機会が

なくなるわけです。

この話を聞いた時、思わず僕は、

「これって、ネタじゃないの?」

と聞きたくなりました。

ところが、なんとも情けないことに、この一連の解任劇、事実なんだそうです。

アナウンサーと言えば、やはり局の顔です。その顔になってくれる人に、おもしろい

特異なキャラの人が来てくれたのなら、その人を育てて、その持ち味を局のカラーの

ひとつにする、くらいの考えってなかったんでしょうか。偉そうに言えませんけどね。

確かに、もてる人間とか、何かに秀でた人間には、嫉妬するのが人間ですけどね。

でも、その嫉妬を、別のエネルギーに変換するぐらいの前向きな気持ちを

持って欲しいですよね。ほんと、偉そうに言えませんけど。